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パーフェクト・ワールド・エンド5-9
――良いこと? あなたはアルファとして生きなさい。アルファとして振舞いなさい。それがあなた自身ができる最善で、あなたを守る最良よ。
――そのための協力は惜しまないわ。あなたがアルファである限り。あなたはかわいい私の子どもだもの。
――もし、それが守られないのなら、私もあなたを守ることはできなくなる。
――だから、もし、そうなったのなら、覚悟を決めなさい。あなたができるのは、そこまでよ。
陵学園の中等部に入る前夜。刷り込まれた声だ。ずっと眠っていたはずのそれが、浮かび上がってくる。その感覚に、成瀬は息を呑んだ。
相当、やられている。
自分のストレスをコントロールできないのは愚の骨頂だ。感情を自制できない自分なんて、自分じゃない。
……あぁ、そうか。
そうだった、と諦めに似た気持ちで思った。この六年。精神的に揺らぎそうになった時、傍にいてくれたぬくもりがあった。一人で生きているつもりで、生きていけるつもりで、結局、そこに頼っていたのだろうか。……いや、そんなはずはない。
そんなことが、あっていいはずがない。ひとりで生きていく。今までも、これからも。
すべきことは、それだけだ。
「皓太には、俺から話す」
「それが良いと思うけど、あんまり誘導してやるなよ。俺が言うのもなんだけど」
「本当にな」
もともと皓太を生徒会に引き入れたがっていたのは、篠原だ。
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