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パーフェクト・ワールド・エンドⅤ 0-3

 ――成瀬さんにとっては、茅野さんとかもそうなんだろうけど、向原先輩もそうなんだろうな、きっと。  以前の自分はそう思うことはできなかっただろうけれど、今はそんなふうに思うこともできる。  「怖い人じゃないって、昔、言ってましたよね。成瀬さん」 「言ったかな?」  問い返した成瀬ははっきりと覚えていないようだった。けれど、そうだろうな、とも思う。自分にとっては彼とはじめてしっかりと会話をした夜のことで、だから、すべてを覚えているけれど、この人にとっては、たぶん、当然の事実で、とりとめもない世間話だったろうから。 「でも、実際、べつに怖くないだろ、あいつ。近寄りがたい雰囲気つくってるだけで、俺よりぜんぜん気も長いよ、本当」  「それ、茅野さんも言ってました」 「だろうな」  くすくすと楽しそうに笑う顔を見つめ、そっと笑みを落とす。怖いだけの人ではないとわかっても、怖くないとはやはり思わない。それは事実だったものの、言葉にするつもりはなかった。  圧倒的なアルファを恐れるのは、オメガの本能だ。それでもなにひとつ怖くないというのであれば、それは最低でも信頼と呼ばねばならないのだろう。

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