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パーフェクト・ワールド・エンドⅤ 0-6

「大変だったってなにが?」 「なにがって、四谷くんのこと。喧嘩してたんでしょう?」 「べつに……」  いかにも心配そうな表情に後じさりたくなったものの、ゆるく頭を振る。教室で派手に揉めてしまったことは事実で、水城が知っていること自体はなにもおかしいことでなかったからだ。 「たいしたことじゃないし、それに、もう仲直りしたから」 「仲直り? そうなんだ。よかったね」  にこりとした笑顔に、行人もぎこちない笑みを返した。これで話が終わるのならよかったと内心で安堵しながら。 「うん。だから、心配してくれなくても大丈夫……」 「でも、これは僕の疑問なんだけど、仲直りって言ったけど、本当に喧嘩する前みたいな、わだかまりのない関係に戻ることはできるものなの?」  だって、と水城は言う。 「怒ってるときとか、苛々してるときって、つまり、普段は隠している本音が一番露出しやすいタイミングってことでしょう? そのときに言われたことを、あとから『本気じゃなかった』、『言い過ぎた』って言われて、なかったことにしていいの?」 「いいもなにも、それも含めてちゃんと謝ってもらって、仲直りしたことだから」 「そっかぁ。榛名くんって優しいんだね」  うんうんとわかった顔で頷いた最後、水城は、でも、と無邪気に言い放った。 「僕だったら無理だな。もう信用できないもん。今度こそ、誰かを売るかもしれないよ」

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