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パーフェクト・ワールド・エンド6-2

「あの、成瀬さん……、祥くん」 「どうした?」 「仲直りしたら? 俺が言うような話じゃないかもしれないけど」  この人が、年下の幼馴染みに甘いと言うことは、誰に言われなくとも自分が一番知っている。 「それが一番、手っ取り早いじゃん。補選の準備もしなくて良くなるよ。大変でしょ。この時期にそんなこと」  そして、この人たちが、この学園の外でもどんな風だったかも、知っている。  ――あの向原さんが、こう出るってことは、よっぽどなんだとは思うけど。でも。  それでも、成瀬が歩み寄りさえすれば、向原は折れる。少なくとも、何年も近くで見ていた自分としては、そう思っている。  問題は、この人にその気が全くなさそうだ、と言う一点に尽きるとも思っているのだけれど。  案の定、心配いらないと言わんばかりの笑みが、その顔に浮かぶ。 「気を使わせて悪いとは思うんだけど」 「……うん」 「喧嘩してるわけじゃないから」  だから、大丈夫と言われたところで、その方がより性質が悪く見える。  喧嘩をしているわけじゃない、と言うのも、おそらく嘘ではないのだらろうが、なんだかなぁ、と眉をひそめたくはなった。なんだかなぁ、本当に。  ……昔から、お互いのことが一番だって、思ってるくせに。  言わないだけで。たぶん、傍にいた人間は、みんなそう思っていたのに。

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