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パーフェクト・ワールド・エンド6-3

「それで、どうする? さっきも言った通り、嫌だったら無理にとは言わないけど」  自分に伺う色を向けるその顔は、まったく変わらないから嫌になる。  ――でも、この人が、そう言う意味で感情を表に出すところなんて、俺も本当に何年も見てないな。  あるいは、向原の前でだったらば違うのかもしれないと、思ってはいたし、そうであればいいとも思ってはいた。  ――俺が、どうこう言う問題じゃ、本当にないのかもしれないとも思う、けど。 「分かった。いいよ」 「ありがとう。そう言ってもらえると助かる。しばらくは忙しくなるから大変だろうけど」 「あ、でも。寮生委員会の方は辞めないと駄目なのか。フロア長は荻原に代わってもらうとして、副フロア長を選定し直してもらわないと」  茅野さんに言わないと駄目だなと考えていると、さらりと成瀬が請け負う。 「いいよ。大丈夫。俺から言っておくから」 「いや、それはさすがに俺が言うよ」 「なんで? 無理を頼んだのは俺だし」 「だって、……なんか、俺じゃなくて祥くんが言うと、保護者が出てきたみたいじゃん」  言い様に、成瀬が小さく瞳を瞬かせてから破顔した。  ――あ、珍しい。  懐かしい、顔。

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