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パーフェクト・ワールド・エンド6-5

「そのつもりです」 「そうか」 「はい」 「まぁ、他の寮の妙な二年や三年に当選されるよりはマシかもしれんな」  茅野自身に言い聞かせているような調子だったが、皓太は結論を待った。この人もなんだかんだと言って成瀬に甘い。本尾が言っていたそれを実感したのは、この数カ月でのことではあるが。 「分かった。寮生委員の方はこっちで調整する。ただし」  形ばかりだったが、茅野は致し方なしと言う態度を崩さなかった。 「いいか? これは貸しだからな」 「なんか、最近、俺、借りてばっかだな」  苦笑気味に落ちてきた言葉に、そう言えば、と皓太は記憶を辿った。 「ねぇ、成瀬さん」 「あ、また、その呼び方に戻った。茅野の所為だぞ」 「なんでもかんでも俺の所為にするな。年下を甘やかしすぎるのはおまえの悪い癖だぞ」 「だって、可愛いから、つい。――ごめん、皓太。なんだった?」 「いや、あの。借りてばっかりって、本尾先輩だよね」 「本尾?」  その名前に、茅野の語尾が跳ね上がる。 「おまえ、何かしたのか、また」 「してねぇよ、何も」 「嘘を吐くな、嘘を。べつにおまえに聞かなくとも高藤に聞けば済む話なんだからな」  嫌そうな成瀬の顔に、要らない藪を突いたかもしれないと思っているうちに、矛が自分に向いた。

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