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パーフェクト・ワールド・エンド6-6

「なぁ、高藤。おまえもまさかそんな中途半端に口にして、今更だんまりを決め込むつもりはないよな」 「え……、と」 「おい、ちょっと、茅野。皓太に絡むなよ」  だから保護者と評したくなるんだと言う素早さで、成瀬が言い返すが、茅野も負けてはいない。 「あのな。何度も口を酸っぱくして言ったと思うが。そうやって、おまえがなんでもかんでも一人で処理できると溜め込んだことで、揉めかけたことが何度あった?」 「かけた、だろ。揉めてねぇよ、一度も」 「誰が火消しをしたからだと思ってるんだ、おまえは」  苦虫を噛んだ顔で茅野ががりがりと頭を掻きむしっている。これはこれで珍しい。  ――なんか、あれだな。  できる限り巻き込まれないように気配を消しながら、皓太は同室者のことを思った。  ――もうちょっと上手にミスコンの一件は交わせなかったのかよ、って思ってたけど。  食堂と言う人目のある場所で櫻寮のツートップに挟まれて揉められて、どうにかできるわけがない。  あれは仕方がない成り行きだったのだと改めて榛名に同情する。 「なぁ、おい、高藤」  いつもり一オクターブ低い声で名前を呼ばれて、自然と背筋が伸びる。普段が不断なだけに、落差があるが、この人も支配階級の人種なのだと痛感する。

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