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パーフェクト・ワールド・エンド6-9

「あれ、どうしたの。高藤。怖い顔して」  階段を上ろうとしたところで、荻原とすれ違う。噂って、怖いな。本人を呼び寄せるとか。そんな仕様もないことを思いながら、笑う。 「そんな顔してた? 俺」 「うん。してた、してた。高藤、やっぱり美形だからさ。怒ってるような顔してると迫力あるよ。この間も、ほら。榛名ちゃんのクラスで威嚇してたんでしょ」 「威嚇って」 「ま、高藤がそうやって怖い顔してたら、榛名ちゃんに手ぇ出そうとする馬鹿もいないでしょ。少なくとも俺らの学年には」  少なくとも、あっという間に噂が出来上がっているらしいのは事実だ。ある意味では良いことなのだろう。だから皓太は曖昧に微笑むに留めて、そのまま荻原と別れた。  ――荻原と、榛名か。  みささぎ祭のときも、なんだかんだで中良さそうだったしな。そう思うと、何も自分が「つがいごっこ」の相手に選ばれずとも、荻原でも良かったのではないかと言う気さえしてくる。  ――でも、なんか、それはそれで微妙な気分がすると言うか。  今まで同室者として面倒を看てきたと言う自負があるからだ。浮かび上がりそうになる感情に蓋をして、皓太は言い聞かせた。それだけだ。  そうでなければ、困るのは俺じゃない。榛名だ。  寮の部屋の鍵を開けると、課題に取り組んでいるらしい榛名が、難しい顏のまま「お帰り」と呟く。半分以上、無意識だろう。 「ただいま」  それでも、この三年。この声が当たり前に近くにあった。譲りたくないと思うのは、恋じゃない。友人として、同室者としてのものだ。  最後にもう一度そう言い聞かせた。

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