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パーフェクト・ワールド・エンド7-2

「対抗馬を立てたりしないんですか、本尾先輩は」  祭りを楽しむ調子で、水城が笑う。  ――本当に、どうでも良いんだろうな、こいつは。  そう分かっているから、口を挟む気も起らない。根本的なところで、この編入生は、他人に興味がない。あるとすれば、人間を支配する自分、に対する陶酔だけだ。  固執する物事に対してだけ、一直線に野心を燃やす。その類の人間の思考は、向原には読み取りやすい。計算だらけなくせに、肝心なところで情に流される弱い人間よりは、ずっと。 「トップがあいつなことに変わりはないだろ。だったら、どうせ同じだ」 「そう言われると、そうかもしれませんね」  微笑を浮かべた視線が、自分へと向いたことにも気が付いていたが、なにかをしようとは全く思えなかった。 「この学園は、あの人のものだから」  含みのある声を背に、たまには櫻寮に足を向けようかと考える。どうせ、茅野がどうとでもしてくれているだろうが。確認するのも悪い手ではない。 「少なくとも、今はね」 「おまえも、貪欲だよな。あと二年、いや、半年もすれば、わざわざ派手に掻き回さなくても、おまえにお鉢が回って来るんじゃないのか」

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