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パーフェクト・ワールド・エンド7-3

「僕を過大評価して下さるのは嬉しいんですが」  相変わらずの微笑みで水城が言う。 「奪い取るのも、お祭りも、嫌いじゃないんです」  その口で、良く言ったものだ。失笑を呑み込んで立ち上がる。背中にかかった声は、聞かなかったことにした。  通常なら、放課後に校内にここまで人が残っていることはない。補欠選挙の急な準備に駆り出されているのが半数と、水城いわくの祭りを楽しんでいるのが残りの多数。  ――それで、本当に良いんですか。俺が聞くようなことじゃないと思いますけど。  戸惑い気味に問いかけてきた後輩の声をふと思い出した。声は似ていないが、喋り方――いや、言葉の選び方が、か、よく似ている。初めて逢ったころから、その印象は変わらない。  ――それで良いも何も、おまえが決めたんだろ。だったら、何の問題もない。おまえが出るなら、あいつらも喜ぶ。  ある意味で、それは本音だった。向原はこの後輩のことが嫌いではない。それも本当だ。  困ったように、高藤が笑む。  ――ご存じだと思いますけど。あの人たちが一番喜ぶのは、元通りになることだと思いますよ。

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