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パーフェクト・ワールド・エンド7-4
元通りになるわけがないことも、あの察しの良い後輩は分かっているだろうが。
元通り。元通り、ねぇ。それが一体、どの状態だと思っているのか聞いてみたいくらいだ。
本当に、この学園を更地に戻すと言うのなら、それは、トップからあの男が消えることが必須条件だ。
この学園を、初めに変えたのは、成瀬だ。ある意味で正常だったアルファを上位に統べる世界から、「平等」と言う御伽噺の箱庭につくり変えた。
――それが、そもそもとしておかしかったんだ。
分かり切っていたことを、繰り返す。
ずっと、そう思っていたし、言っていた。ついでに、こうも言ってやっていた。
おまえがしたいように、すればいい。本当に、そうしたいのなら、手助けはしてやる。そう、言った。
そして、今のこの不可思議な状況ができあがった。
「向原さん」
櫻寮の玄関先で出逢ったのは、高藤と榛名だった。いかにも嫌そうな顔を向けてきたのは榛名だ。相変わらず、分かりやすい。
「あー、……先に入ってたら?」
呆れた口調で高藤が榛名に告げる。不承不承の顔で目礼をして、小さな背が消えていくのを見送って、小さく笑った。困ったように高藤が眉を下げる。
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