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パーフェクト・ワールド・エンド7-6

 最終的には、とわざわざ付け加えられた一語が、案外と真実を突いている。そのことをあえて指摘してやる筋合いはないので、「そうか」とだけ頷いてみせる。実際、どうなるかだなんて、誰にも分かるはずがないとも思いながら。  この後輩が本当にまだ子どもだったころ。長期休暇のたびに学外で遊んでいたことがあった。理由は簡単だ。成瀬が実家で過ごすことが憂鬱そうだったからだ。  気が付いたのは誰が先だったか。提案したのは誰が先だったか。覚えてはいないが、いつの間にか、篠原やときには茅野も含めて、別荘地で過ごす日々があった。  それが高等部に進学したころから、なにくれと理由を付けて、示し合わせて寮に居残るように変化していったけれど。  その場に、顔を出していた唯一の年少者がこの後輩だった。成瀬が可愛がっているらしいのは明白で、少しそれが意外だったことを覚えている。  あの男は、誰も懐に入れないと、漠然と思っていた。それが違ったのだと言うことに。  そして、あのころは、もう少し世界はまろやかだった。慣れない言い方だが、それでも言い表すとするなら、これが一番近い。  まだ、取り囲む空気に優しさが満ちていた。歪さは鳴りを潜め、ただただ、平和に。それが仮初だったとしても、だれも仮初だとは気づいていない長閑さが確かにあった。

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