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パーフェクト・ワールド・エンド7-7

「ずっと、こうだったら良いのに」  脈絡もなく呟かれた台詞に、律儀に反応したのは、中学生だった篠原だ。 「こうって、何が。夏休み?」  あと数日で学園寮に戻らなければならない、と言う頃合いだった。今になって考えると、あの警戒心の塊のようだった男が、長期休暇にまで、なぜ自分たちと過ごそうとしていたのかは、少し不思議だ。家に居づらかろうと、完全なプライベートな空間に居れば、秘密が露見する可能性は格段に減るのだ。その方が、ずっと気も張らずに済んだだろうに、と。 「おまえと一緒にすんな。あー、でも、最終的にはそうかも。なんか、陵が嫌なわけじゃないけど、疲れるんだよな。視線が気になる」 「俺はおまえにもそう言う感覚があることに驚いたぞ」 「あるに決まってるだろ。気にしても意味がないから、気にしてないだけで。なんか四六時中監視されてるみたいじゃん。そんな見ても面白いもんでもないだろうに」 「……まぁ、見て、目の保養にはなってんだろ、諦めろ」  身も蓋もない篠原の台詞に、拗ねた声が「おまえは良いよな」とやり返している。健全な空気が平和だと言うのなら、この空間は間違いなく平和だった。 「じゃあ、向原は一緒だろ。おまえら二人、無駄に目立ちまくってるもんな。会長選、マジで出るの?」  三年に進級する前に、生徒会選挙が行われるのが陵学園の通例だった。今も、成瀬は現会長に頼まれて生徒会役員の仕事を手伝っている。次の会長は成瀬だろうと、誰もがそう思っていた。

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