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パーフェクト・ワールド・エンド7-8

「まだ、先の話じゃん、それ」 「って言っても、十月くらいから諸々の準備が始まるんだろ? 茅野がぶつぶつ言ってた気がするんだけど」 「あいつ、寮長の引継ぎが決定してから、ひとり言めちゃくちゃ増えてるから。あの柏木が心配してた。今からこの調子で大丈夫か、あいつって」 「まぁ、本番は半年は先だからな。それにしても、柏木に心配されてるって、相当だな。あいつら基本的に仲悪いのに」  向原にはあまり興味のない同寮の同期生の話題が楽しそうに続いている。積極的に交ざりたいと言う感情は浮かび上がらないが、楽しそうな声を聞いているのは嫌ではない。  ――変わった、か。  向原を昔から知る知人は、口を揃えて、この一年ほどで自分が丸くなったと言う。  そんなことはないつもりなのだが、そうなのかもしれないと諦めの境地で思う瞬間が増えた。例えば、それが今だ。  こんな風に、特定の人間とコミュニケーションを取ろうだなんて、昔は思いつきもしなかった。 「茅野は良くも悪くも柏木の心配してるだけで、悪気はないんだけどな。ただ、やることがなんと言うか雑だから、無意識に柏木の地雷を踏み抜いてるだけで」 「無自覚が一番性質が悪いと思わないかって、柏木、真顔で唸ってたぞ。俺、帰省の前に小一時間くらい愚痴聞かされたんだけど」 「同室だから。甘えてるんだろ」

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