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パーフェクト・ワールド・エンド7-9

「確かに今年から俺だけどさ。去年はおまえが同室だっただろ。って言っても、どうせ、おまえにはあいつ、そんな愚痴は言ってないだろ」  柏木は成瀬に気がある。寮の同学年内の暗黙の了解に近いそれに、成瀬は苦笑するだけではっきりとした態度は後にも先にも取らなかった。  ――気が付かないもんだな、本当に。  アルファの多い陵学園の中でも、頭一つ飛びぬけたアルファ。その地位を不動のものにしているこの男が、本当はオメガと言うことに。  ――それはそれで問題がないと言えばない。ただ。  なんで分からないんだろうな、とは思う。それがずっと、向原には不思議だ。この学園に入学し、この男と出逢った当初から。向原には、初めから今に至るまで、オメガにしか見えない。たまに香る、甘い匂いも。 「なぁ、向原」  不意の呼びかけに、向原は視線を向けた。他意のない顔で成瀬が微笑う。どこまでが仮面なのかは未だに読み取りづらいが、嫌いではない。 「向原は、やる気ない?」 「やる気って、生徒会か」  巻き込むつもり満々のそれに、声が苦くなる。端的に言って、面倒くさい。拒絶するより先に、篠原が「無理、無理」と首を振った。

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