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パーフェクト・ワールド・エンド7-11
「来年は、皓太も入って来るし。それまでに安心できるところにしたい」
「って、あいつ、アルファだろうが」
相変わらずの過保護ぶりに、篠岡が苦笑いで肩を竦めている。
「だから、アルファだとか、そう言った第二の性が関係ない風にしたいって言ってるだろ。どうせ」
珍しく、どこか投げやりな調子だった。
「ここを出たら、否応なしに、絡んでくるんだ」
どれだけ平等だと言ってみせたところで。この世界は平等じゃない。この国の頂点に立っているのは、アルファだ。そして被支配層に位置するのがオメガ。
――それが、変わることはない。
いつか。本当に、いつか先。変わることはあるのかもしれないが、それは今じゃない。
――今じゃ、ない。
「分かった」
「え? なにが」
「良いよ、やってやっても」
半分は、気まぐれだった。残り半分は、知らないで良い。少なくとも、今は。信じられない、と言いたげな顔の篠原の横で、成瀬が笑った。嬉しそうに。
それだったら良いと、思っていた。
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