322 / 1144

パーフェクト・ワールド・エンド8-3

「……そうだな」  本人が全然そんなそぶりを見せないから、つい忘れそうになるけれど。あいつは俺とは違う。 「だから、それもそうだけど。高藤も本当に忙しくなるんだから、榛名がちゃんと見ていてあげないと。自分で何でもできると思ってる人間って、本当に厄介だよ。実際、ある程度以上できるから余計に性質が悪い。なんでもかんでも一人で全部やろうとしちゃうからね……と、なに? 榛名」 「いや、なんでもない。そうだな、と思っただけ」  訝しげな四谷に、行人は慌てて弁明する。高藤もそうだが、成瀬も正にそうだろうなと思っただけだ。やはり、あの二人は似ている。  ――雰囲気もだけど、そう言う内面の部分かな。なんでもないって顔で、誰にも気が付かれないまま、貧乏くじ引いていくようなとこ。  そう言うところが、好きではあったけれど。 「あ……」  窓の外を通り過ぎていった影に、視線が吸い込まれる。立ち止まりかけた脚を、四谷が急かす。 「榛名、行くよ。あと二分でチャイム鳴るから」  後ろ髪をひかれながらも、行人は前を向いた。

ともだちにシェアしよう!