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パーフェクト・ワールド・エンド8-7

「そう言う世界にしたかったから、したんだろうけど」 「え?」 「この学園は、あの人の箱庭だって話だよ。俺も言えなくなるけどね、同じ側に立つことに決めたから」  箱庭。すぐには理解できなかった言葉がじわじわと胸の中に落ちてくる。行人は、陵学園の中等部に入学した日のことをはっきりと覚えている。生徒会長として登壇した成瀬の姿も。  あんな人がいるのかと驚いたのだ。同時に、不安しかなかった全寮制の学園での生活に一筋の希望が見えたような心地にまでなった。  アルファでも、オメガでも。劣等種とされている自分でも、この学園では平等でいられるのではないかと。そんな夢を見た。 「あのさ、榛名」  呼びかけられて、行人ははっと顔を上げた。この学園に入学した当時からずっと一緒だった。認めたくはないが、ずっと助けてくれていた同室者。 「俺は、おまえが今の状態を保てたまま、卒業できたら、それで良いと思ってる」 「……え?」 「だから、あの人の後継になることを決めたんだ」  その声はひどく淡々と、二人きりの部屋に響いた。

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