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パーフェクト・ワールド・エンド8-8
目の前のドアが、やたらと分厚く瞳に映る。本来だったら、「そう」であるべきはずの最上級生の部屋だ。けれど、行人にとっては、――ほんの半月ほど前までは、気軽に立ち入れる場所だった。
気軽と言うと、語弊はあるかもしれない。けれど、緊張しながら、このドアを叩くのが好きで。そして笑顔で受け入れて貰えることが幸せだった。それだけで満たされると思うくらいに。
そのドアが、立ち尽くしていた行人の目前とゆっくりと開いた。
「どうした? もう消灯時間過ぎてるぞ」
「……成瀬さん」
いつかから気付いていたのだろう。ノックをすることもなく開いてしまった。行人は表情を取り繕えないまま、半ば呆然と相手を見上げた。半月前と何も変わらない顔が、さも自然と中へと誘う。断ることなんて、できるはずがなかった。
「寮生委員になったら、怒られるよ。茅野に」
「すみません、時間外に」
「俺は良いけど。皓太は? あいつ、一応まだフロア長でしょ。名目上は。何も言わなかった?」
当たり前のように出てきた名前に、行人は表情を硬くした。気づいていないはずもないのに、成瀬の声は変わらなかった。
「それとも、何も言えないようなことでもあった?」
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