329 / 1144

パーフェクト・ワールド・エンド8-10

 静かな声が淡々と告げる。その内容を噛み砕こうと思って、できなかった。そんなこと、ちっとも嬉しくない。嬉しくない。 「成瀬さん」 「なに?」 「……成瀬さん」  縋るような声になった自覚はあった。けれど、これが精いっぱいだった。 「俺は、ここにいても良かったんですか」  この人は、俺と違う。一人で生き抜いていく。生きていく。でも、俺はそれができない。その出来損ないの俺のために、あいつの優しさを利用していいわけがない。  感情が決壊したように蠢いている。苦しかったのは、それだ。高藤の負担になりたいわけじゃない。なれるわけがなかったのかもしれないけれど、それでもできることなら対等でいたかった。少なくとも、一月前まではそれができていた。歪だったかもしれないが、ギリギリのところで保たれていた。  つがいなんてまやかしで、守られる必要なんてなかった。 「行人」  優しい声だった。 「おまえは、ここにいていい」  欲しい言葉をいつでもくれる、優しい声。それに、ずっと甘えてきた。 「ここは、誰も弾き出さないよ」

ともだちにシェアしよう!