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パーフェクト・ワールド・エンド9-6
無駄なことをと言わんばかりの調子に、同じ寮の後輩くらい覚えていてやれよ、と成瀬は言ってみせた。
興味の無いものにはとことん興味を示さないこの男が、覚えているとも思えなかったけれど。
「なぁ、祥平」
不意に真面目な調子を帯びた声に、視線を向ける。きれいな顔をしているなと改めて思う。母親の色がいつまで経っても抜けきれないままの自分とは違う、同性が見ても格好良いと思うだろう、それ。
――身長も、この一年くらいで抜かれたしな。
出逢ったころは、自分の方が高かった。それがひどく昔のことにもつい昨日のようにも思えて。こうしている間にまた三年が経つのだろうかと呑気な思考まで浮かぶ。
「おまえさ、必要以上に構うなよ」
「構うなって、誰に? あの子?」
「それ以外に誰が居るんだよ。皓太には既に構ってるだろうが、必要以上に」
「そう言えば、皓太に、あんまり構わないでくれって言われたんだけど。なんでだろう、反抗期かな」
「おまえな」
はぐらかすなと暗に告げられて、分かってると形ばかりは頷く。必要以上に構うつもりはない。そんなリスクを冒す気はない。そう思っているのも事実だった。
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