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パーフェクト・ワールド・エンド9-10
だから、分かった。あるいは、何年も前から分かっていた。この関係は、何かしらの弾みでおかしくなっても何らおかしくはないと。
あくまで、向原が今はそう思っていて、それを正しいと思っているから、成り立っているだけなのだと。
だから、――だから、分かっていた。
もし、いつか。いつか、向原と道を違うとしたら、自分が原因なのだろうと言うことも。
ずっと、見ない振りをしていたことがある。気が付かない振りを押し通そうとしていたことがある。
自分にだけ特別だと言うように、この男が優しくするのは、好意があるからだ。考えなくとも当たり前のことだった。
そして、他の誰からそれを向けられても、すぐに気が付いて、距離を取る。あるいは適度に利用する。そうやって、この学園で生きていくために対処していた。
けれど、何故か、向原に対してだけはそれができなかった。だから、何も知らない振りを通した。それが「これまで」と「今から」を守る唯一だと分かっていたから。
あるいは、自分がアルファだったら、こうは思わなかったのかもしれない。アルファである自分に、アルファである向原が好意を向けていたとしたら、もっと素直に受け止められた。対等なそれだと思うことができた。
――それも、すべて、言い訳ではあるけれど。
第二の性なんて、関係ない。そう言う自分が一番気にしている。振り回されている。けれど、と思うことも事実だった。
できることは、もう多くは残っていない。あと半年後には自分たちはここから消える。
だとすれば、最後までやるだけだ。あの頃の自分が正しいと信じていたことを。あの頃の向原が良しとしてくれていたことを。
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