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パーフェクト・ワールド・エンド10-12

 ――それが、もし、ぜんぶ、「そう」ではなかったとしたら?  想像に、頭がすっと冷えた。榛名はただ皓太を見ていた。 「聞いた。成瀬さん、本人から」  先ほどまでの激しさをどこに押し隠したのか、不思議なほど静かな声だった。 「俺に言ったってことは、誤魔化さなかったってことは、おまえに伝わっても良いってことだと思う」 「ないだろ」  考えるよりも先に感情で否定する。「ないだろ、有り得ない」 「だって、」  あの人の家は、オメガどころかベータすら存在を認めないような、アルファ至上主義のところで。あの人は、そこで期待を一身に背負って生きていて。 「……嘘だろ」  そう思いたいのに、今までどこかで不思議に思っていた穴に悉くピースが埋まっていくように思えて。 「だから、俺が、今更そんな嘘を吐くはずがないんだよ」 「言うなよ、俺に」  繰り返した台詞に、榛名もまた繰り返した。

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