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パーフェクト・ワールド・エンド10-13

「知ってる誰かがいた方が良いと思ったんだ。俺じゃ力になれないことでも、アルファのおまえなら力になれることがあるのかもしれない。余計なお世話かも知れないけど、でも。きっと、他に知ってる人なんていないだろうし」 「違う」 「え?」  零れた言葉に榛名が首を傾げる。 「違う。知ってるよ、あの人」  だからか。だからなのか。腑に落ちないと思っていたすべてが埋まっていく。  ――知りたくなかったけどな。知らないで良いなら。  ぞっとしたのだ。今、確かに。  もし、もし、この人がアルファとして生きてきたすべてが嘘だったと言うのなら、この人の歩んできた道はなんだったのだろう、と。過った想像に。  親から、友人から、そのすべてから。アルファだと思われ、アルファとして振舞って生きてきたそこに、この人の意思はあるのだろうか。それはこの人の人生と言えるのだろうか。

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