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パーフェクト・ワールド・エンド11-4

 アルファに生まれて、損をしたと思ったことは一度もない。どれほどきれいごとを並べたところで、この世界の頂点に君臨しているのはアルファだ。そして、その支配下にあるのがオメガだ。  そのオメガが唯一、幸せに生きていくことができる方法。それが、アルファとつがいになることだ。どこにいるのか知れない、「運命」とでなくとも、アルファとつがい庇護下に入れば人並みの幸せを得ることができる。  その道が最善なのだろうと漠然と思っていた。自分の足で独り立ちすることのできない、庇われることでやっと生きていける、見た目が良い以外に取り柄のない劣等種。ずっと、そう思っていた。あいつに出逢うまでは。 「向原先輩」  篠原の部屋を出てすぐに廊下で出くわした小柄な影に、そう言えば特別フロアに配属されていたなと思い出した。 「もう帰られるんですか」  にこりと微笑む顔は、まさしく庇護下にあるべき生き物のそれだった。 「どうぞ、お気を付けて」

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