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パーフェクト・ワールド・エンド11-8

 否定せずに静かに笑えば、茅野が声を潜めた。 「ちなみにな」 「……なに」 「これも初めてのことじゃなくてな。おまえが姿を消すからだぞ」  その言葉に、視線を落としてしまって、後悔した。あの日以来、ずっと直視しないようにしていたのに。  ――べつに、見た目がそこまで好みってわけでもないんだけどな。  そもそもで言えば、向原はアルファの女が好きだった。自分が守る必要のない、自立した強い女。 「変なところで馬鹿だな、本当に」  呆れた風に吐き捨てたはずの声は、なぜかどこか甘い響きを含んでいた。

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