363 / 1144

パーフェクト・ワールド・エンド11-9

 そう言う意味で、「好き」だと自覚したのは、いつだったかはっきりとは覚えていない。  けれど、あるいは、特定の誰かに対して興味を持っていなかった自分が、一目見た瞬間に、関心を持った時点で、そうだったのかもしれない。 「成瀬」  向かい側に腰かけて、呼びかける。早く部屋に戻せよと言い残して、茅野は戻って行った。夜の寮は、静かだ。昔は、こうやって時間を過ごしていたこともあったなと、懐かしい記憶が過ったのは、久しぶりに篠原の部屋に行っていたからかもしれない。  中等部にいたころは、そうやって夜を過ごしていた。  ――こいつの、この無防備さの原因の一端は、俺にあるような気もしてたんだけどな。  向原を頼りにしている、と言うこととは別次元で、自分には手を出してこない体の良い防御壁だと認識していたのだろうが。

ともだちにシェアしよう!