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パーフェクト・ワールド・エンド11-11

「なんだ」  ふっと静かに笑う表情は、穏やかだった。 「良いな、懐かしい」 「懐かしいか? そんな良いものでもないだろ」 「そんなことない。俺、楽しかったよ、あのころ」  あのころ。中等部にいたころは、確かに、今とは違った。終わりがまだ見えていなかったこともそうだろうし、成瀬自身も、今ほど捻じれてはいなかった。 「おまえは、ずっとそうじゃなかったのかもしれないけど」 「……成瀬」 「大丈夫。謝らないよ」  さらりと受け流して、続ける。 「謝っても、すっきりするのは俺だけだし」  謝るようなことをしたのか、と言う代わりに視線を外す。何か言いたいことがあったわけではなかった。沈黙をものともせず、「それに」と成瀬が言う。以前と同じ調子で。 「おまえが聞きたいのは、それじゃないだろ?」

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