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パーフェクト・ワールド・エンド12-1
[12]
たとえば、自分がオメガではなかったら。そんな取り留めもない「たられば」を夢想して喜んでいたのは、本当に幼かった頃の話だ。成長するにつれ、それがどんなに意味のないことなのかを自ずと悟る。
アルファにすり寄って、守られる人生を選ばないのなら、残された道は「ベータ」として集団に埋没しながら地を這って生きていくしかないのだ。
それが、オメガに生まれた自分の宿命だと思っていた。だから、驚いたのだ。本当に、驚いたのだ。
すごいと思って、……羨ましいとも確かに思って、そして、彼が今まで人知れず片付けてきたのだろうすべてを、恐ろしいとすら思った。
――俺には、誰かを頼ったら良いと、言ったくせに。
自分は、きっと、それをしない。そして、現実的に、ひとりで何でもこなしてしまう。
それが問題なのだと改めて思ったのは、四谷の言葉を聞いた折で、確信したのは、余裕のなくなっている高藤を見た時だった。
高藤でこの状態だと言うことは、あの人の抱えている負荷はどれだけのものなのだろう、と。
――でも、本当に、あんなことを言っても良かったんだろうか。
高藤のことは信用している。他の誰にも言わないだろうと分かっている。成瀬も行人の判断を責めないだろうと思う。
――でも。
一人の寮室で、行人は机に突っ伏した。開けている問題集は、今日中にやり切るつもりだった分量どころか、一問も解けていないままだ。
「向原先輩も、知ってた、か」
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