375 / 1144
パーフェクト・ワールド・エンド12-8
「ま、その所為で、余計に特別感が出たような気もするけどね」
「……ふぅん」
「ある意味で、あの人と身近に喋れる機会って今だけだから。榛名がちょっとでも知りたい、理解したいって思うなら直接話してみるのも手だとは思うよ」
「……」
「勿論、場所と状況は選んでは欲しいけど」
分かってるよ、と応じた声が不貞腐れているように感じて、言い直す。分かっている。本当は、すべて。
高藤の言う言葉の正確さも、あの人たちの距離感も。ただ、分からないのは、未来の話だった。
どこまで意識しているのかは知らない。自分には言う必要性がないと思われているだけなのかもしれない。でも。
「言わないよな、成瀬さん」
「言わないって、何が?」
「俺やおまえが安心してこのままここで過ごせれたらいい、とか。自分が卒業するまでは基盤を守ってやるとか。当たり前の顔で言ってくれるけど」
そのことを嬉しいとは思うし、無条件に安心もしていた。すべてを知る前では。何も考えず、ただ甘えていられた。
「その先のことを、絶対に言わないよな」
あの人自身の、未来についてのことを。この学園を卒業しても、当たり前に未来は続いていくのに。その話を、行人は一度も聞いたことがない。
ともだちにシェアしよう!