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パーフェクト・ワールド・エンド12-8

「ま、その所為で、余計に特別感が出たような気もするけどね」 「……ふぅん」 「ある意味で、あの人と身近に喋れる機会って今だけだから。榛名がちょっとでも知りたい、理解したいって思うなら直接話してみるのも手だとは思うよ」 「……」 「勿論、場所と状況は選んでは欲しいけど」  分かってるよ、と応じた声が不貞腐れているように感じて、言い直す。分かっている。本当は、すべて。  高藤の言う言葉の正確さも、あの人たちの距離感も。ただ、分からないのは、未来の話だった。  どこまで意識しているのかは知らない。自分には言う必要性がないと思われているだけなのかもしれない。でも。 「言わないよな、成瀬さん」 「言わないって、何が?」 「俺やおまえが安心してこのままここで過ごせれたらいい、とか。自分が卒業するまでは基盤を守ってやるとか。当たり前の顔で言ってくれるけど」  そのことを嬉しいとは思うし、無条件に安心もしていた。すべてを知る前では。何も考えず、ただ甘えていられた。 「その先のことを、絶対に言わないよな」  あの人自身の、未来についてのことを。この学園を卒業しても、当たり前に未来は続いていくのに。その話を、行人は一度も聞いたことがない。

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