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パーフェクト・ワールド・エンドΦ-2

 返す言葉が見つからず、無言で雑誌を閉じる。何を言っても子どもの言い訳になりそうな予感しかしない。 「自覚があるなら、まだマシだな」 「悪かったな、分かってるよ。わざわざ反応してる俺が馬鹿だってことくらい」 「その台詞、録音しとけよ、いっそ」  つまるところ全く信用されていないらしい。  ――でも仕方がないか。  陵に入学してからずっと、長期休みは実家に戻らず向原たちと過ごしてばかりだ。逃げていると判断されたところで、反論もできない。 「まぁ、親からの刷り込みは、根が深いとは言うけどな。上書きしてやろうか」  透けて見えた気遣いに、小さく笑う。 「できるの?」 「どう思う?」 「できそうで嫌だ」  なんでもできそうな印象は、真実を裏切らない。成瀬は自分は秀才型だと自認しているが、向原は違う。天才だ。なんでもできる、自分は持ち得なかったすべてを持っている男。 「言葉によるコントロール」 「あぁ、得意そうだよな、おまえ」 「誰にでも効くわけじゃないから、そう言う意味では得意ではないな。処世術のひとつ」

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