393 / 1144
パーフェクト・ワールド・エンドΦ-18
「どっちにしろ、来年もこの調子じゃ寮は離れるだろうし。学内でだけ気を付けてたら良いんだから、気楽だろ」
「……そうだな」
それ以上を言っても意味がないと思ったのか、成瀬が話を変えた。
「俺、割と今までの人生の中で、今が一番、楽しいんだけどさ」
「おまえの人生、楽しくないときなんてなかっただろ」
「そんなことないよ」
顔が良くて頭も良くて、なんでもできる。アルファの見本のような男だ。お上品な顔をしている割には腕っぷしも強い。家も良い。そりゃ、今まで楽しくなかったことなんてないだろう。誰だってそう思うはずだ。それなのに、成瀬は曖昧に笑って否定する。
「それで、それが成り立ってるのって、ある意味で向原のおかげなんだけどさ」
また妙な言い方をするなと確かに思った。一言で言うとするならば、「らしくない」。何がどうとは言えなかったのだけれど。
「だからこそ、たまに思うと言うか」
かみ合わない感覚を払しょくできないまま、篠原は黙ってその先を聞いた。面倒なことを言わなければ良いと、内心どこかで思いながら。
「あいつは、俺の何をそんなに気に入ったのかなって」
ともだちにシェアしよう!