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パーフェクト・ワールド・エンドΦ-22

 ――オメガの近くにいて、おまえのリズムが狂う可能性もあるんじゃないのか。  向原の懸念を、当の本人は一笑していたけれど。それがまた気にくわない。  あいつは、分かっていない。そう思う向原を、きっと成瀬は理解しない。自分は大丈夫だと妙なところで過信をしている、あの男は。 「可愛い顏してたけど。成瀬って、あんまりそっちの気、ないよな」 「……ないから懐いてんだろ」  あるいは、そう言う意味で好かれたいと思っているのかと当初は向原も疑っていたが、近くで見る内に違うと分かった。純粋な憧れ。あるいは、――本能的に自分を害すことがない仲間だと認知して、安心して尻尾を振っているか、だ。  向原にやたらと警戒心を向けているのも、本能の一種だろう。  本当に良く分からない生き物だと思う。オメガと言う生き物は。分からないままで良いと思っていたはずなのに、そのことに頭を悩ませる日が来るとは考えてもいなかった。

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