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パーフェクト・ワールド・エンドΦ-23

「そんなことより、俺と本尾よりよっぽど、その一年の方が火種だと思わねぇ?」 「……それこそ言ってやるなよ。好きで火種になろうとしてるタイプでもなさそうだし。まぁ、その方が余計にやっかいってのはあるかもだけど」  苦笑いで弁護に走った篠原の瞳には、あの一年はどう映っているのだろうかとふと思った。この男は、それなり以上に観察眼もあるはずなのに、何の疑いもなく成瀬のことを「アルファ」だと思い込んでいる。 「オメガだったら、存在そのものが火種だろ」 「オメガって、ないだろ、さすがに。全寮制のウチに何を好き好んでオメガが来るんだよ」  案の定と言えば、案の定の答えに、そうだな、と向原も応じた。結局、そう言うことだ。この学園にオメガなんているはずがない。この学園の主席がアルファでないはずがない。  思い込みの裏に、真実は隠されていく。

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