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パーフェクト・ワールド・ハルⅠ-5

「寮別対抗ミニ運動会に、ミスコンとか。盛りすぎでしょ、イベント。おまけにこれとは別に、部活ごとの展示とかイベントとかもあるんでしょ? これは確実に俺らの休みないね」 「ないだろうな」  自分と荻原に、みささぎ祭の概要と、基本的な寮の仕事とを説明するためだったらしいミーティングは、小一時間で終了した。初日から頭が痛くなりそうなスケジュールを聞かされて、げんなりしたのは皓太だけではなかったらしい。最後に片付けまで任されて、荻原は人好きのする優しげな顔をしな垂れさせて、ホワイトボードに残る文字列にイレーサーをかけている。 「まぁ、でも、ミスコンは茅野さんがするって張り切ってたし。俺らは使い走りだけで済むよ、きっと」  目玉イベントとされているミスみさざきコンテスト――そもそも、この学園にミスは存在しないはずだが――は、寮別対抗の種目の中で飛びぬけて得点配分が高い。つまるところ、ミスコンを制した寮が、みささぎ祭で優勝することになる。 「張り切っても、今年のミスコンは楓寮の圧勝だとは思うけどね。茅野先輩には悪いけど」  今年こそは何が何でも優勝するぞ、と張り切っていた寮長の姿を思い浮かべたのか、苦笑いの荻原に、皓太は壇上で見た少年を脳裏から引っ張り出した。 「あー……、かな」 「そうだって。ウチはまぁ、榛名ちゃんだろうけどさ。あの子、見た目は可愛いから」 「嫌がるだろうけどな」  そして間違いなく八つ当たりされる未来が見えた。げんなりと応じた皓太に、どことなく羨ましそうに荻原が口を開いた。 「高藤は部屋一緒だよね。おまけに今年で四年目でしょ? ちょっと良いな」 「……良いか?」 「オメガじゃなくても、どうせなら可愛い方が良くない? 狭い部屋で二人きりなんだし。むさくるしくなくて」  なるほど、そう言う解釈もあるか、とそこは納得した。確かにむさくるしくはない。 「俺の同室、今年から美岡になったんだけどさ。一緒に居て楽だし良いやつそうだけど、それとは別問題で、むさいんだよね」 「あぁ、美岡、ラグビー部だもんな」  顔だけ見ればイケメンだが、体格が如何ともごつい。部屋面積を必要以上に占有しそうな気配はひしひしと感じる。 「一昨日も昨日もあいつ夜中まで筋トレしてたからね? 暑苦しいわって思わず突っ込んだら、筋肉は一日にして成らずとか真顔で返してくるから、なんかもういいわって諦めたけど」  外部進学組より一足早く皓太たちはこの寮で生活を開始させている。一週間ほどが経って、談話室で「合う」「合わない」などとお互いのルームメイトについて話す姿を見る機会は増え始めていた。 「壊滅的に気が合わないよりはマシって思わないと仕方ないけど、馴染むまで時間かかるよな。俺も榛名と同室になった直後は、結構しんどかったもん」 「嘘。おまえが?」 「マジだって。ほら、あいつ多少は丸くなったけど、昔はもっと……なんと言うか、気性の荒い野良猫みたいだったし」  思い当たるところがあったのか、荻原が破顔した。 「そういや、中等部の初めのうちはそんな感じだったね。俺も一年の時クラス一緒だったんだけど、榛名ちゃん、ツンツンしてた記憶がある。構いたくて仕方がない、ってやつも多かったけど」  まぁ、そのころは……いろいろとあったから、ピリピリしてたと言うこともあるかもしれない。

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