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第11話

「お前がイくのは伴をイかせてからだ。お前なら簡単だろ?」 「で、でも……俺もイきたい……」 「中井――」  ちゅっ。 「え」 「――俺の言うことが聞けるよな?」  中井の頬に背後からキスした途端、中井は一瞬硬直したが、すぐにかあーっと顔を火照らせた。見えないが、頭上からは湯気が立ち昇っているだろう。ヤカンのようだ、と霧島は思った。 「んんんんああああもう! さっさとイけや、この遅漏野郎ッ!」 「うン――ッ、うぁ、あ、ッん、ンンン――――ッ!」  導火線に火がついた中井の舌技はすさまじく、あっけなく伴は達した。  ボールギャグによって抑えられた嬌声は、それはそれで可愛いが、やはりどこか物足りない。 「口を塞ぐ必要はなかったな」  もっと伴の声が聴きたいと思った。  伴がどびゅりと発射した精液はすべて中井の口腔内にぶちまけられた。中井はえずきそうになりながらもその波を堪え、口の中の異物感になれると、伴の上に覆い被さり、一気に吐き出した。 「う、うぅ……ぅ……」  伴はもう抵抗する気も起きないらしい。  一度吐き出されたものとはいえ、もともとは自分の精液なのだし、それを吐き出した相手は意中の相手である中井だ。 「はッ……はぁ、あ、んんッつ、あ……ッ」  すべてを吐き出した中井は、すぐさま自身の性器に手をやり、しゅこしゅこぬぷぬぷと手淫を始める。待ちきれなかったのだろう。解放までの時間はあっという間だった。 「はあぁああああ――んッ」  中井の精液は綺麗な放物線を描き、いまだ放心状態の伴の顔面に降りかかる。虹のアーチならぬ白濁のアーチだ。  だが伴は嫌がる顔ひとつせず、中井の放ったものを顔面に受け止める。  精を放った中井は満足げに、そして貶すような視線で伴を見下したが、伴はその態度に怒りを見せることはなく、彼もまた不思議と笑っていた。  ――やはり、カオスだ。  このふたりを見ていると、自分がまるで普通の人間のように思える。  とはいえ、中井も伴も、そして霧島自身もセクシャルマイノリティーなのだが。  ――あれ。結局おかしいのは誰だ?  思考は原点へと舞い戻る。  だが、霧島は思った。  ――俺たちはみんなどこかおかしい。だから楽しいんだ。

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