9 / 73
海斗ごめん
ちょっと!
なんでこうなるの!
しかも、橘内さん見てるし。
「槙さん!」
むぎゅーーと抱き締められる。
あっ、暑苦しい。
「気持ちいい。これなら、寝れる」
って。ちょっと!
あと、背中に手を入れないで、くすぐったいから。
「槙さん!」
「一樹、だよ。一樹」
あんだけ海斗に念押されたのに。
ごめんなさい、ちゃんと守れなかった。
半泣き状態の僕に橘内さんが、
「寂しがりやの甘えん坊なんですよ一樹さんは。家庭環境が特殊で、愛情に飢えたまま大きくなったので。だから、幾つになっても、お子様なんです。まぁ、諦めて、抱き枕になってください」
て、そんなオチあり!?
「朝早いから、寝るぞ」
「槙さん・・・じゃなかった、一樹さん、まだ、八時前だよ!」
「いいの、いいの」
良くない!
心の叫びは、跡形もなく一樹さんの腕の中へ消えていった。
もう、と言いかけて、その穏やかな寝顔を見上げれば、何故か心がズキンっと疼き、やはり、彼をほっとけないと思う自分がいて、正直戸惑った。
海斗、ごめん。
一樹さんにひかれてはいけないのに、なんで、こんなにひかれるのか、気持ちが揺れ動くのかかーー。
訳がわからない。
ともだちにシェアしよう!