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彼の暴走
「一樹さん・・・」
気だるい体を奮い起こし、彼の肩にしがみついた。
「ナオ⁉」
突然の事にあたふたする彼。
「寂しいのは、みんな、おんなじ」
「ナオ・・・」
僕の体に、タオルケットをそっと掛けてくれる彼。何気なく、気を使ってくれる。それが、本当の彼の姿。
「みっともない姿見せて、ごめん」
苦笑いを浮かべる彼。
でも、お互い、目があって・・・。
「やっぱり、ナオが好き」
彼の腕が背中に回ってきて、ぎゅっと抱き締められた。
その大きい肩は、かすかに震え、小さく見えた。
・・・泣いてるの⁉
「泣くわけないだろ」
強がる素振りを見せる彼。
その不埒な手は、背中を滑り落ちていく。
「だめ、一樹さん」
「今すぐしよう」
「だから、あの・・・」
彼の肩越しに、橘内さんの姿が見えた。主人の醜態にかなり、呆れている様子だ。
「一樹さん、時間です」
「あと、一分」
「先代も、病院からこちらに向かってます」
「はい、はい、分かったよ」
溜め息を何度も吐きながら、ようやく、僕の体を離してくれた一樹さん。
お互い、汗でびっしょりだ。
「お二人とも、着替えが必要ですね」
橘内さんまで、溜め息を吐いてるし。
その時、ぐいっと、上顎を持ち上げられた。
なんで⁉
と思った時には、一樹さんの口唇が、自分のに重ねられていて。
く、苦しいし!!
薄く開いた隙間を抉じ開けて、強引に彼のが侵入してきた。
「ナオ、愛してる」
ひとしきり舌と舌を絡ませたのち、彼は、真摯までの眼差しで、そう告白してくれたけど。
僕は、ただ、ごめんなさいを繰り返した。
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