21 / 73

寂しがり屋に舞う恋

「大体、予想つくだろう。代わりに、槙家に嫁として寄越せ、そう言うことだ、ナオ」 言い渋る一樹さんの代わりに海斗が。 「俺と、ナオが恋人だって、言ったら、あの人、それでもいいから、ついでに俺も槙家に来いって言われた」 「言ってる意味が・・・」 「俺と、槙さんとで、ナオを共有する、つまりそういうこと。最初、聞いた時はイヤで、断った。誰だって、好きなひと、独占したいだろ。ナオの体に指一本触れさせたくないし、髪の毛一本だって、触らせたくない。でも、一樹さん、当選の挨拶回りや、お詫び行脚をして、その他に、取材があったり、分刻みのスケジュールで忙しい合間、ナオの側にずっといてくれて。殆ど寝ずに。それ見たら、ナオの事、独り占めしたら、バチがあたるんじゃないかなって思った」 「海斗・・・」 「どうしていいか、俺も分かんねぇよ」 海斗が、ぐしゃぐしゃと、髪の毛を掻きむしった。 「俺が、きっぱりと諦めるのが一番なんだろうけど・・・ごめん。あんだけ、強いナオを見たら、ますます甘えたくなった。どうしようもなく好きになってしまった。早織の身代わりではない。決して」 海斗と、一樹さん。 二人の真摯な思いは、痛いほど、心に突き刺さってきて。 「ナオが選べ。共有するとなったら、一人で、俺と槙さんを受け入れる事になる。理性が保てるうちは、ナオの体を気遣う余裕もあるけど、間違いなく、ぶっ飛ぶと思うし」 「俺も、海斗と同意見だ」 二人とも、目がうるうるしてて。 今にも、泣きそうで。 甘えん坊なのに、よく我慢してる。エライ❗ そう思った途端、また、僕の悪い癖。 ほっとけなくなってきて。 「甘えん坊と、寂しがり屋同士、仲良くしよ。海斗も、一樹さんも、僕にとって、大切な人だもの」 「ナオ~!」 「ナオ!」 二人とも、我慢の限界だったみたいで、僕にガバッと、抱き付いてきた。体が、思うように動かない、この状態で、二人分の体重を支えるのはかなりしんどい。 しかも、傷口に響く。 「重いから、暑苦しいから、痛いから」 思い付く限りの言葉を並べた。 「ナオの匂いだぁ」 二人は、頬をすりすりし、まさに至福の時。そんな大型ワンコみたいな二人の、頭を撫でる僕は飼い主になった気分で。 って、どういう画図なのか・・・。 「ナオ、キスしたい」 いきなり海斗が。一樹さんも、俺もって。 「恋人同士になって、初めてのキスしたい。槙さんは⁉」 「海斗、一樹でいいよ。呼び捨てで。ナオの前では、対等でいたい」 ぐいぐいと、二人が迫ってきて。 もうこうなったら、なるようにしかならない。傷口が万一、開いても、ここ病院だし。 うん。キスする。二人と、恋人同士になった、証に。 目を閉じると、すぐに、海斗のつるんとした口唇が重なって。つぎに、遠慮しがちに、一樹さんの薄い口唇が重なった。 「ナオ、大好き」 「俺も」 一旦、離れたもの、すぐに、また口付けされ。 「うっ・・・ん!ん!」 い、息出来ない。 く、苦しい。 息を吐く間もなく、舌に二人のが絡まってきて。どっちかの手が、パジャマのスボンの中へ滑り込んできて。 だ、だめ! 個室だけど、だめ。 その時、扉が開く音がした。 「一樹さん、なにやってんですか!」 静かな病室に響き渡ったのは、橘内さんの声。ものすごく、怒ってる。 「当選早々、失職するつもりですか⁉場所をわきまえて下さい」 びしっと言われ、一樹さん、項垂れてた。 海斗も、ごめんさないって。 橘内さん、やっぱり凄いかも。

ともだちにシェアしよう!