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寂しがり屋に舞う恋
「大体、予想つくだろう。代わりに、槙家に嫁として寄越せ、そう言うことだ、ナオ」
言い渋る一樹さんの代わりに海斗が。
「俺と、ナオが恋人だって、言ったら、あの人、それでもいいから、ついでに俺も槙家に来いって言われた」
「言ってる意味が・・・」
「俺と、槙さんとで、ナオを共有する、つまりそういうこと。最初、聞いた時はイヤで、断った。誰だって、好きなひと、独占したいだろ。ナオの体に指一本触れさせたくないし、髪の毛一本だって、触らせたくない。でも、一樹さん、当選の挨拶回りや、お詫び行脚をして、その他に、取材があったり、分刻みのスケジュールで忙しい合間、ナオの側にずっといてくれて。殆ど寝ずに。それ見たら、ナオの事、独り占めしたら、バチがあたるんじゃないかなって思った」
「海斗・・・」
「どうしていいか、俺も分かんねぇよ」
海斗が、ぐしゃぐしゃと、髪の毛を掻きむしった。
「俺が、きっぱりと諦めるのが一番なんだろうけど・・・ごめん。あんだけ、強いナオを見たら、ますます甘えたくなった。どうしようもなく好きになってしまった。早織の身代わりではない。決して」
海斗と、一樹さん。
二人の真摯な思いは、痛いほど、心に突き刺さってきて。
「ナオが選べ。共有するとなったら、一人で、俺と槙さんを受け入れる事になる。理性が保てるうちは、ナオの体を気遣う余裕もあるけど、間違いなく、ぶっ飛ぶと思うし」
「俺も、海斗と同意見だ」
二人とも、目がうるうるしてて。
今にも、泣きそうで。
甘えん坊なのに、よく我慢してる。エライ❗
そう思った途端、また、僕の悪い癖。
ほっとけなくなってきて。
「甘えん坊と、寂しがり屋同士、仲良くしよ。海斗も、一樹さんも、僕にとって、大切な人だもの」
「ナオ~!」
「ナオ!」
二人とも、我慢の限界だったみたいで、僕にガバッと、抱き付いてきた。体が、思うように動かない、この状態で、二人分の体重を支えるのはかなりしんどい。
しかも、傷口に響く。
「重いから、暑苦しいから、痛いから」
思い付く限りの言葉を並べた。
「ナオの匂いだぁ」
二人は、頬をすりすりし、まさに至福の時。そんな大型ワンコみたいな二人の、頭を撫でる僕は飼い主になった気分で。
って、どういう画図なのか・・・。
「ナオ、キスしたい」
いきなり海斗が。一樹さんも、俺もって。
「恋人同士になって、初めてのキスしたい。槙さんは⁉」
「海斗、一樹でいいよ。呼び捨てで。ナオの前では、対等でいたい」
ぐいぐいと、二人が迫ってきて。
もうこうなったら、なるようにしかならない。傷口が万一、開いても、ここ病院だし。
うん。キスする。二人と、恋人同士になった、証に。
目を閉じると、すぐに、海斗のつるんとした口唇が重なって。つぎに、遠慮しがちに、一樹さんの薄い口唇が重なった。
「ナオ、大好き」
「俺も」
一旦、離れたもの、すぐに、また口付けされ。
「うっ・・・ん!ん!」
い、息出来ない。
く、苦しい。
息を吐く間もなく、舌に二人のが絡まってきて。どっちかの手が、パジャマのスボンの中へ滑り込んできて。
だ、だめ!
個室だけど、だめ。
その時、扉が開く音がした。
「一樹さん、なにやってんですか!」
静かな病室に響き渡ったのは、橘内さんの声。ものすごく、怒ってる。
「当選早々、失職するつもりですか⁉場所をわきまえて下さい」
びしっと言われ、一樹さん、項垂れてた。
海斗も、ごめんさないって。
橘内さん、やっぱり凄いかも。
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