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奥様同士のお付き合い

橘内さんが手配してくれたタクシーで、ランチ会の会場となる大通りに面したレストランへ。 オープンキッチンの店内は明るく開放的で、カウンターにはパスタや、色とりどりの野菜のサラダ、肉料理や、焼きたてのパンが所狭しと並んでいて、女性客が、自分で好きなものを取り、お皿に乗せていた。 福光さんの奥様がどこにいるのか、顔も分からなくて、カウンターの辺りをうろうろしていたら、 「もしかして、槙さんの奥さんかしら⁉」 おばさんくらいの年齢の女性が声を掛けてくれた。すごく上品で、華やかな感じがする。 「はい、ナオと申します」 深々と頭を下げた。 「福光みさです。今日は、来て下さってありがとう」 「あの、その・・・驚かないんですか⁉」 奥さんが、゛男゛ならーー普通なら、びっくりしたり、冷やかしたりするのに。 「福光派には、同性愛者である事を公表している議員が、所属しているの」 あれ⁉ もしかして、一樹さんが話していた人かな⁉ 「こっちよ」福光さんに案内され、窓際のテーブルへ移動した。 「皆さん、槙一樹さんの奥様のナオです」 二テーブルに四人ずつ腰を下ろしていた。皆さん、綺麗な方々ばかりで。僕みたいな、田舎者には、あきらかに場違いな雰囲気。 「ナオさんは、佐藤議員の奥様の隣に座って」 福光さんに言われ、キョロキョロ辺りを見回した。すると、一樹さんくらいの年齢の女性が手をあげてくれた。 「ナオさん、こっち」 椅子を後ろに引いて、「ここにどうぞ」みたいな感じで、案内してくれた。 「すみません、ありがとうございます」 「吉崎真弓です。やっと、本人に会えた‼」 歓声を上げ、座るなり手を握られ驚いた。 吉崎・・・さん⁉あれ、苗字が違う⁉ 「ごめんなさい、声が大きいのは元々で。五月蝿いけど気にしないで」 初対面の僕に、彼女は、にこにこ優しく笑い掛けてくれた。同じテーブルに座っている奥様たちを紹介してくれたり、一緒に、料理を取りに行ったりしてくれた。 僕が、一人きりにならない様、気を遣ってくれた。 「私のパートナーは、佐藤かずさ。一樹と、同じ同性愛者よ。一樹と、私達は、大学の同期」 「そうなんですか。すみません、何も聞いてなくて」 「ううん、彼に、私から話しをしたいって頼んだから、気にしないで。一樹からね、十三も年下の男の子と付き合う事になったって聞いて、私もかずさも吃驚よ。だから、ナオさんに会えるのすっごく楽しみにしていたの。やっぱり、『ナオくん』の呼び方の方がしっくりくるかな⁉」 「好きに呼んでください」 「でも、大変でしょう⁉一樹の子守り」 「そんな事ないです」 ぶんぶんと頭を振った。

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