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奥様同士のお付きあい

それから終始和やかなムードで、談笑に花が咲いて、会は無事お開き、と思ったら、 「では、皆さん、場所を変えて、また、お話ししましょう」 と、福光さんが仰って。 「真弓さん、あの・・・今度はどこに⁉」 「向かいのカフェよ」 もうお腹がいっぱいなのに、他の皆さんは、まだ、入るの⁉ すごいなぁ。 なんて、思いながら、ふと、メニー表が目に入って。 「え‼真弓さん」 吃驚して、彼女の服の裾を引っ張った。 「ん⁉」 「ランチ代、こんなに掛かるんですか⁉」 一般庶民の僕には、四千二百円のランチ代が眩暈がするくらい高くて。思わず目を丸くしてしまった。 「まだ、安い方よ」って真弓さん。僕が気を遣わず出席できるように、このレストランを選んだらしい。皆さん、どれだけのお金持ち何だろう。 想像すら出来ない。 リュックサックの中をごそごそして、財布を取り出そうとしたら、 「ナオさんの分は、予め預かってますよ」 と、福光さんに笑顔で言われた。 「すみません、何も聞いてなくて」 「大丈夫よ。お茶のお代も頂いてあるから、心配しないでね」 何から何まで。 一樹さん、橘内さん、段取ってくれてありがとう。 その後、カフェに移動して、またまた、値段を見て吃驚した。 真弓さんは、そんな僕を見て、お腹を抱えて笑ってた。 「ナオくんって、本当に面白い子ね」 返す言葉が見付からず、俯くしかなかった。 いつも夕方までお喋りを楽しんでから、ようやく解散になるみたい。でも、真弓さんが気を遣ってくれて、途中で帰ることが出来た。 奥様同士のお付きあいが、こんなにも大変だなんて。 一度は断ったものの、真弓さんが運転する車で、家まで送って貰った。 「また、一緒にお茶しようね」 笑顔で手を振って、彼女の車を見送り、階段に足を向けた時、誰かに見られている気がした。回りを見渡しても、誰もいなくて。 気のせいかな⁉そう思って、階段を駆け上がった。 玄関を開けたら、一樹さんの靴が置いてあって、それだけなのに嬉しくて、彼の名前を呼ぶと、寝室から声が返ってきた。 「一樹さん、ただいま」 途中で買い物をしてきた紙袋を手にしたまま、大好きな彼のもとへ向かった。 「おかえり。疲れただろう」 「うん。奥様同士のお付きあいって、大変なんだね。あのね、一樹さん、吉崎真弓さんって知ってる⁉」 「あぁ、さっき、電話で話しをした。ナオが、吃驚してばかりいて、楽しかったって」 一樹さんは、ベットの上に腰を下ろして、何やら難しそうな書類に目を通していた。 「お仕事の邪魔でしょう⁉」 「今は、仕事より、ナオの話しの方が大事。おいで」 書類を枕元に置いて、膝の上をぽんぽんと叩いた。 「たまには、俺に甘えて欲しいな。一応、年上だし」 「なに、それ」 くすくす笑うと、一樹さん、少しむすっとしてた。なんか、可愛いい。 紙袋を下に置いて、一樹さんの膝の上にちょこんと座った。 チュッと、軽く額に口付けをして貰い、頬っぺたに、そして耳にもいっぱい、彼のキスが降ってきた。 「くすぐったいから」 身を捩ると、「さっきの仕返しだよ」一樹さんにっこりと笑ってた。 もう、本当に子供なんだから‼ 「また、出掛けないといけないんだ。ナオと、ずっとこうしていたいんだけど、ごめん。帰り遅くなるから、先、寝てていいから」 「うん」 「寂しい思いばかりさせて、ごめんな」 「だって、お仕事だもの」 ぎゅっと、彼のシャツをシワが残るぐらい強く握り締めた。 「一樹さんも、お付き合いとかで、忙しいの、分かってるもの」 「随分、妻らしくなってきたね。嬉しいよ」 「妻って・・・」 「まだ、慣れない⁉」 「うん。だって、槙さんの奥さんって、呼ばれるのも、なんか、恥ずかしくて」 「ナオは、俺と海斗の大事な奥さんだよ。パートナーより、そっちの方が、俺はいいな」 「一樹さん・・・」 すごく嬉しくなって、めいいっぱい背伸びして、彼の頬っぺたにチュッと口付けをした。そしたら、口にして、とねだられた。 「ダメ」 「なんで⁉」 「一樹さんの事だから、エッチな事始まるでしょう‼」 「バレてた⁉ごめんね。ナオ、吃驚した事教えてくれる⁉」 一樹さんに言われなきゃ、うっかり忘れる所だった。ありがとう、思い出させてくれて。

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