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初めての喧嘩と仲直り
帰りが遅くなると、一樹さんから電話が来て、送られてきた、今日の初登庁日の模様を録画した動画を、ベットに腰掛けて見ていたら、
「ナオ‼ナオ‼」
すごい勢いで彼、帰ってきて、ただいまの一言もなく、いきなり、ベットに押し倒された。
「携帯壊れるから」
体をおこそうとしたら、ぶちゅーと、口づけされた。
「ナオは、俺の事、嫌い⁉」
「嫌いな訳ない」
「じゃあ、なんで、早織の子供わざわざ引き取るの⁉」
「だって、姪っ子だし、子供には罪はないでしょう⁉おばさんにもちゃんと話しをしたし」
「そっか・・・分かったよ」
一樹さん、やっと納得してくれのか、大きく頷いてくれた。
それなのに、彼たったらーー。
「一樹さんなんか大嫌い‼事務所で寝る‼」
「ナオ!」
それから、わずか、数分後には撤回してきたから、頭にきた。
彼の手を振り切って、家を飛び出し、階段を駆け下りて、一階の事務所の呼び鈴を鳴らした。
警備員さん、こんな、夜中にわたわたさせてごめんなさい。
「ナオさんどうしました⁉」
橘内さんと、鏡さんが、しばらく、ここに泊まり込んで仕事をしてる。
だから、鳴らせば、どっちかが出てくれる。
「橘内さん、一晩泊めて下さい」
「夫婦喧嘩ですか⁉」
「だって、一度はのぞみちゃんを引き取るのに賛成してくれたのに、構って貰えなくなると、寂しくて死んじゃうとか、だっこしてくれないなら一生不眠症だとか、訳の分からない事ばかり言って・・・」
「駄々っ子はほっとくのが一番です。さぁ、どうぞ」
促されて中へ。間取りは、二階と一緒で、手前に広めのリビングがあり、奥の二部屋が、応接室と、一樹さんの仕事部屋になっているみたい。
鏡さんは、既に、ソファーベットの上で横になっていた。
辺りを見回しても、べットが一つ。
「すみません、なんか、お二人の邪魔して」
「私達、そういう関係ではありませんよ」
橘内さん、苦笑いしていた。
「橘内は、寝袋があれば、どこでも寝れるんだ」
鏡さんが、ごそごそと身動ぎして、一人分寝る場所を空けてくれた。
「一緒で嫌だと思うが・・・」
「そんな事ないです。押し掛けたの僕ですし」
彼の隣に潜り込むと、すぐに、腕が腰に回ってきて、抱き寄せられた。
「鏡さん‼ちょっと、待って‼」
「そんなに、暴れるな。狭いんだから仕方ないだろう」
まさに彼のいう通りで。
小さく縮こまり、彼の、逞しい二の腕を枕がわりにして、背中越しに聞こえてくる彼の心音に耳を傾けた。
「橘内は、あぁ、見えて、高校と、大学は、山岳部に所属していて、こっちに戻ってきて、最初に出来た友達。毛むくじゃらの大男という見た目とは違い、気は優しくて、面倒見が良くてて、友達も多くて・・・。だから、芳樹さんが、公設秘書としてどうしても必要な人材だった。一樹でためなら、橘内に跡を継がせる気でいたから」
「そうなんですか・・・」
「ナオ、君の話しを聞かせてくれるか⁉普段、怖がって、声も掛けてくれないだろう」
「だって・・・」
いっつも鏡さん、怖い顔しているんだもの。
近寄るなっていう、オーラが凄いし。
「まぁ、いい、寝よう」
鏡さん、そう言うと、更にムギューと抱き締めてきて・・・。
「一樹が抱き枕にしている意味分かったかも。すごく、気持ちいい」
頬をすりすりしてきて、もう、びっくり。
「か、鏡さん‼」
慌てる僕にはお構いなしで。
橘内さん、笑って見てないで、助けてよ‼
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