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初めての喧嘩と仲直り

目が覚めると、仄暗いリビングルームの中、テーブルの上に置かれた電話が、緑色に点滅していた。 橘内さんも、鏡さんも、誰もいない。 物音ひとつしない。 ベットから起き上がって、これからどうしようか、と考えた。 まずは、一樹さんに謝って・・・いや、そもそも悪いのは彼だし。 でも、一樹さんに相談なしに決めたのは、事実。怒るのも無理ない。 ーー素直に、ごめんなさいしよう 布団を畳み、事務所を出ようと、ドアノブに手を置いた時だった。 勝手に開いたのは。 しかも、ドアの向こうに、ここにいるはずのない人が立っていて、吃驚した。 「なんで?」「嘘でしょ?」 信じられなくて、思わず、口を両手で押さえた。 「ナオ、どうした、そんなに吃驚する事ないだろ」 「何で⁉学校は⁉」 声が震える。 「学校行ってる場合じゃないだろ‼ナオから電話貰って、一樹の事だ、臍曲げてるに違いない、そう思って、夜行バスに飛び乗った。朝、五時前にこっちに着いて、一樹に連絡したら、橘内さんと一緒に迎えに来てくれて」 眠気眼を手で擦りつつ、溢れんばかりの笑顔で、ぎゅっと抱き締めてくれた。 「海斗、苦しい‼」 その人の名前を口にすると、少しだけ、力を緩めてくれたけど。 離れていた時間を埋めるかのように、彼の抱擁は、とても情熱的で・・・。 繰り返し、何度も、額や、頬っぺたに、キスをしてくれた。 その場にいた、橘内さんと、鏡さんは、目のやり場に困り、苦笑いを浮かべてた。 ひとしきり、抱き合って、ようやく、一樹さんがいないことに気が付いた。 「一樹さんですか⁉お腹が空きすぎて、半分死んでますよ」 橘内さんが、呆れたように口にした。 「昨晩、福光派の夕飯会があったんですが、色んな方から声を掛けられて、夕飯を食べ損なったみたいで、帰ったら、ナオさんに何か作って貰おうと、機嫌よく話されていたんですが、帰りの車内で、鏡に、のぞみちゃんの事を聞かされて・・・あとは言わなくても分かると思いますが」 「じゃあ、何か、作ってあげないと」 「駄目ですよ。甘やかせたら、本人の為になりませんよ。ナオさん、彼に、ちゃんと謝らせてからにしてください」 相変わらず、橘内さん手厳しい。 鏡さんも、うんうんと頷いてるし。 「一樹には言ったんだ。俺や一樹には、血の繋がりのある家族がいる。でも、ナオは、一人ぼっちだろって。早織さんは、入院中で、退院しても、ナオの元に戻ってくれるなんか分からない。一樹と、早織さんとの間に何があったか、知らないけど、子供には何ら罪はないだろって」 「海斗、ありがとう」 「別に」 恥ずかしいのか、彼、顔をそむけてしまった。 それが、また、格好よくて。 手を絡めると、そっと、握り締めてくれた。

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