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守り守られ生きる未来
「鏡さんよ。あんたに用はない」
ドスの効いた低い声に、騒々しい店内が一瞬静まり返る。
「しかしまぁ、早織によう似てる」
ニヤニヤと嘲笑いながら、舐め回すように見られ、思わず目をそむけた。
「早織のダンナが、上納金をネコババしたまま、逮捕され、こっちは、えらい損害を被った
んや。身内が代わりに返すのが筋っていうもんやろ⁉違うか⁉」
「ナオは、槙家の人間ーー早織さんとは、なんの関わりもない。弟だったのは、五年も前の事。警察を呼ばれる前に、どうぞ、お引き取り下さい」
鏡さん、僕の前に立ち塞がり、臆する事なく男たちと対峙していた。
僕なんか、怖くて、ガタガタと手足が震えてたのに。
鏡さん、やっぱり、すごい。
「男嫁だっけ⁉笑わせてくれる。マスコミに流したら、いい金になりそうや。世襲議員の名家である、槙家が聞いて呆れる」
ゲラゲラと、男が下品に笑い出した。
「もう、そのくらいにしておけ、配島」
川木さんの声が後ろから聞こえてきて、びっくりした。なんで、ここに⁉
「家を出てからずっと、ナオを遠巻きに見守っていたんだ、川木は」
鏡さん、呆れ顔で教えてくれた。
「えぇ‼」
本当に、全然、気が付かなかった。
彼に教えて貰わなかったら、知らないままだったかも。
川木さんは、僕の横を通り、男の許にゆっくりと近付いて行った。
「いくらお前でも、鏡には敵わない」
男の肩に手を置き、ポンポンと二回、軽く叩いた。
「だれかと思ったら、川木か」
「配島、その金は、もともとオレオレ詐偽で騙し取った金だろう。あまり、目立つように騒がない方がいいんじゃないか⁉」
川木さんは、脅すかのように、男を睨み付けた。
その物言わね迫力に、敵わないと判断したのか、男たちは、そそくさと退散していった。
「怖かった・・・」
安心したら力が抜け、その場にへたり込んでしまった。
「大丈夫かぁ⁉」
川木さんが、体を支え起こしてくれた。
「ありがとうございます‼」
いっぱい頭を下げると、
「一回でいいんだ」
って、顔を赤くして、苦笑いしていた。
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