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守り守られ生きる未来
記者会見はその後も続き、一央さんが、最後に一言述べて、それで、締め括る予定になっていたみたい。マイクを片手に、いざ‼というとき、タイミングを見計らった様に携帯の着信音が鳴り響いた。
静かだった場内は、また、ガヤガヤし始まって・・・。
一央さんのでも、一樹さんのでも、橘内さんのでもない。
記者の皆さんでもない。
音の鳴っている方に自然と視線が集まりだして、やがて、司会をされていた一央さんの秘書の方に皆が目を向けた。
「すみません」平謝りしながら、一旦、切ろうと、画面に目をやるなり、驚いて、慌てて、一央さんに手渡した。
一央さんは、耳にあてて、一言、二言、会話を交わした後、マイクをあてた。
『槙芳樹です』
電話を描けてきたのは、一樹さんのお父さんだった。この場に居合わせた皆さん、一様にびっくりしていた。
勿論、一樹さんも、僕も。
だって、全然聞いてなかったから。
まさに、サプライズ。
『息子たちのプライベートな件で、皆様にご迷惑をお掛けして申し訳ありません。長男の一樹、次男の翔、そして、一樹に嫁として来てくれたナオーーそこにいます三人は、私の大切な家族であります。特にナオは、辛い境遇の生い立ちにも関わらず、生来の明るさ、優しさで、皆を元気にしてくれる。今や、彼のーー嫁の存在が、私の生き甲斐になってるといっても過言ではない。またまだ青二才の息子たちを、これからも、温かく見守って頂きますようお願い申し上げます』
一樹さんのお父さんの言葉に、嬉しさのあまり、涙腺が崩壊寸前だったのに、橘内さんが、ハンカチを渡すものだから・・・。
こんな大勢の前で泣くことになってしまった。
しかも、一央さんが、これからは、僕と一樹さんと橘内さんの後見人となることと、上京した際は、父親代わりになると仰ってくれて。
奥様も、息子が三人も増えて嬉しいわ、と手放しで喜んで下さり、気が付けば、僕のもらい涙で、記者の皆さん涙ぐんでいた。
橘内さんと、奥様の蟠りがなくなって、本当に良かった。一央さんとも、親子の名乗りが出来て良かった。
「みんなで、幸せになろう」って一樹さん。
頷くと、『私も入ってるのか⁉』って、一樹さんのお父さんの声が‼
まだ、電話が繋がってて、びっくりしたのはいうまでもない。
無事、記者会見が終了し、記者の皆さんがお帰りになり、僕たちも、一央さんと、奥様にご挨拶して、帰途についた。
一樹さん、緊張の糸が切れたみたい。
車に乗り込むなり、ごろんと僕の膝の上に横になり、頬をスリスリしたりして、甘えん坊さんモードに。
「一樹さん、くすぐったいから」
身を捩ると、今度は、服の中に、顔を突っ込んできて・・・誰かさんとそっくり。
「一樹さん‼」
さっきの凛々しかった姿はすでに、幻と化した。助手席に座る橘内さんも、かなり呆れていた。
一樹さんや、海斗、おじさん、おばさん、芳樹さん、橘内さん、鏡さん、福光さん、奥様ーーみなさんに守られいるからこそ、今、こうして生きてられる。
だから、僕は、のぞみちゃんを守り、一樹さんと海斗と共に、生きていく。
それが、お世話になったみなさんへの、僕なりの恩返しになればいい。
「一樹さん、ごめんなさい」
「何⁉何⁉」
彼、びっくりして、顔をひょこっと出してきた。朝、苦労してセットした髪がぐしゃぐしゃ。でも、このだらしなさが、彼らしくて、かわいい。
「・・・ますます好きになったかも・・・」
「惚れ直した⁉」
気恥ずかしくて、俯いたまま、小さく頷くと、彼、嬉しそうに、顔を上げてキスをしてくれた。
「・・・帰ったら、すぐナオを抱きたい。いい⁉」
甘い彼の囁きに、身も心も、メロメロに溶けていく。橘内さんや、運転手さんが、目のやり場に困るほど、僕達は、互いの指を絡め、何度も、何度も口付けを交わした。
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