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みんなに ありがとう
自宅前に、何故か、ものすごい人だかりが出来ていた。
ご近所の方や、何度か買い物に行ったスーパーの店長さん以外は、知らない人ばかりだけど、一樹さんや、僕を見るなり、笑顔で集まってきて下さって、テレビの放送を見て、感動しました‼と、口々に皆さん、そう言ってた。
「一樹さん⁉」
僕は、何の言か全く分からなくて、彼を見上げると、
「ナオを守る為、記者会見の模様は、生中継で全国に放送された。父が、ナオを家族同然と言った事、福光先生も、ナオの父親代わりになる、そう言った事で、だれもナオや、早織、海斗たちに手出しできなくなった。少し、難しいかな⁉」
「えっ⁉全国⁉生中継⁉えぇーーーー!!嘘でしょ⁉」
目の前が真っ暗になって、頭がくらくらしてきた。
一樹さんの奥さんという事から泣き顔まで、しっかり全国に放送されたとは・・・。明日から、外歩けないよ。恥ずかしくて・・・。
「いやぁ、水臭いですよ。槙先生の奥様なら、そう仰って下さい。私たち、槙先生には、大変お世話になっているんですから」
店長さんに、握手を求められ、他の皆さんにも、次から次に、握手を求められ・・・。
もみくちゃになりながらも、一樹さんと、笑顔で、一人一人、一生懸命応じた。
「流石、槙家の嫁ですね」
ようやく、落ち着いた頃、橘内さんと、遅れて帰ってきた鏡さんに、同じことを言われた。
「ナオさん、私の事は、今後、名前で呼んでください。もう、身分を隠す必要もなくなりましたから。あと、私も、貴方の事は、お義兄 さんと呼ばせていただきますので」
「橘内さん・・・じゃなかった翔さん、それは、出来ません。だって、僕の方が、年下なのに、変です」
「兄嫁である貴方に、敬意を払いたいのです」
翔さん、ずっと、背負っていた重荷がようやくおろせて、なんだか、前より優しくなったみたい。
「じゃあ、俺も、名前で呼んで貰おうかな。よそよそしいの、嫌だし」
「はい‼」
二人に、笑顔で答えていたら、一樹さんが、ものすごく、不機嫌になった。
どうやら、焼きもちを妬いたみたい。
やっぱり、一樹さん、かわいい。
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