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本物の恋について

 ソファ。隣に座る1人の少年。大好きな人。  散々バカにしてきて、一生理解しないと思っていた、「この人が隣にいてくれるだけで幸せ」って感覚を、オレは現在進行形で体感中。  心があたたかいとか、春が来たとか。ありきたりだけど、よく言ったものだって思う。  恋は人をバカにするとも言うから、オレは今、まさに、バカになってるのかもしれない。でも、それでも良いやなんて思ってしまうんだから重症だ。昔のオレが今のオレを見たら、ショックでぶっ倒れるか、怒りでブチギレるかしそう。  でも、そんな幸せ真っただ中のオレが吐き出した溜息は、我ながらちょっとした疲労と苛立ちが混ざっていた。  幸せのあまり漏れた吐息とは、ちょっと言えない。  大好きな人と一緒に過ごす時間には、少し不適切な溜息がきっかけになったように、ここしばらくの間で随分と膨らんだ不満を、オレは言葉に変えた。 「オレの気持ちは本物で、オレの想いは気の迷いでも何でもねぇっつーのに。なんで誰も分かってくれないんすかねぇ」 「仕方ないだろ。この国でお前の気持ちが純愛だ! 祝福しろ!! って言う方が無理があるだろ」 「いや、別に祝福しろとは言ってないっす。認められれば、まあ、上々っすけど、そこまで高望みもしてねぇし。ただオレは、この気持ちを頭ごなしに否定した上で、他の人間との恋愛を勧められるのが心底鬱陶しいんすよ!!」 「はは、モテ男くんの言い分は違うねぇ」 「……じゃあアンタは好きでもないヤツと結婚出来るんすか」  つい、ジト目になってそう返してしまってから、少しだけ後悔した。  きっと隣で座る彼だって、オレと似たような立場で、オレと同じことを思ってくれている。同じ不満を抱いてくれているし、そう遠くない将来訪れる「後継者を作る為の婚姻」も、今じゃ納得できないだろうって。  オレの希望的観測じゃなくて、それが彼の本音であることは、今更確認しなくても分かってるはずなんだけど。  それでも、もし。  もしも、間髪入れずにっていう勢いで、「別にできるけど」なり「それくらい当たり前だろ」なんて返されたらどうしようって。  彼を疑っているワケじゃないけど、ガラにもなく不安になって、「言わなきゃ良かったかな」そんな後悔が、少しだけ、でもしっかりとオレの中に生まれてた。

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