2 / 33
2
とは言っても、「話題の映画」が「話題の映画」でいられる期間は、あまり長くない。
今までもそうだったけど、蓋を開ければそうでもなくて、「いつ上映したの?」と首を傾げるほどだったり、作品の出来が素晴らしくても、次の話題が見付かればあまり触れられなくなる。
だから今の、運命の恋大安売り状態だって、映画が上映されて1ヶ月も経てば終わってるんだろうけど。
「あーあ、馬鹿らしくてやってらんないっす! もっと他の話題は無いんすかねぇ」
オレは、あいにく、我慢強い性質じゃなかった。
というか、「忍耐」という言葉が、オレの辞書にはない。
自分で思っているより苛立っていたみたいで、思っていたよりも大きな声が出ていた。
我ながらちょっとした不審者だし、流行を叩く人間っていうのは、あまり良い目で見られないものだ。余計なトラブルは避けたい。今回の例で言えば、熱心なファンに絡まれるとか。
でもまあ、通行人の多くは自分の事に手一杯らしくて、オレの叫び声を気に留めた気配はなかった。良かった。絡まれたり、ましてや、通報なんてされてしまったら、面倒な事この上なかった。
ただ、最初からオレの方をちらちら見ていた何人かは。
多分オレの性格なんて、どうでも良いんだと思う。それこそ、何をしても「格好良い!!」で片付けてしまうつもりなんだろう。
オレの叫んだ内容もばっちり聞こえていたと思うんだけど、きゃー、なんて、熱に浮かされた黄色い声をあげたワケで。
オレはますます苛立ったし、気分も沈んでいった。
ともだちにシェアしよう!