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男の子はといえば、そんな情けないオレをバカにするでもなく、むしろ、オレの言い分はもっともだと言うように、「まあ、なぁ」呟きながら頷いていた。
どうやら、派手にどもった事も、大袈裟に息を呑んだ事も気付かれなかったみたいだ。
気付かれた上で触れられなかったのだとしたら、その気遣いは、ちょっと痛いけど。
「あの学校の生徒は、本当、筋金入り、って感じだし。運転手の送迎が当たり前で、自分の足で歩いたり走ったりが縁遠く見えちまうのは、まあ仕方ないな。で、そんなイメージを抱かれている1生徒であるオレが走っていた理由だけど。…………好きな作家の新刊が今日発売なんだ」
その答えも、意外だった。
ポーカーフェイスなんてどこへやら、オレは誰がどう見ても分かるくらいに、驚きをありありと顔に出していたと思う。
あと、本人も理由を言う時、徐々に小声になっていったから、最初から気恥ずかしさを感じていたっていうのも、あるかもしれない。
真っ白な頬を、ほのかに赤く染めて、話している間ずっとオレの方を見ていたのに、視線をぷいと逸らした。
うん。こういう顔。さっきの笑顔とは、ちょっと変わってしまうけど、お気取りでもなんでもない、こういう顔が見たかったんだ。この子なら見せてくれるんじゃないかって、期待してたんだ。
「でも、それこそ使用人に頼めば良いんじゃないっすか? そもそも書店の方から出向いてくれそうっすけど」
そんな表情を見ることができて嬉しいし、書店を呼びつけるだけの力を持ちながら自分の好きな作家のために、自分の足を使うとこには好感を抱いたのに。
咄嗟に出てきた言葉がコレなのは、オレは自覚以上に、ひねくれているのかもしれない。
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