「……ドＭ？」 　オレの反応で、ますます楽しそうな顔を見せて笑ってくれているのは嬉しい。嬉しいけど、最後に碧眼をきょとんと丸くさせてとんでもない事を吐き捨てられた。 　ヤバイ、この子、真顔になってる。これ、絶対不名誉な誤解されてるっすよね！？ 　そりゃあ、最近のマセた小学生なら、もっと洒落たことを言うだろうし。 　いろんな経験を積んできた高校２年生が言うには、ちょっとスマートさに欠けていたし。 　代償さえ幸せ！なんて言ったら、確かにドＭだと誤解されても仕方ないかもしれないけど！ 　まず、こういうセリフがぎこちないのは、勘弁してほしい。 　スマートにやりたいのはオレも同じだけど、恋愛に関しては１年生なんだ。もしかしたら園児並みかもしれない。超初心者。 　……でも、ちょこっとだけ、こんな時間も楽しいって思ってしまうオレが、いないではない、かもしれない。本当は彼を１発でクラッとさせるくらいの口説き文句を、言ってみたいんだけどね。 　それと、本当、不名誉にもほどがある誤解についてだけど。 　こほんとわざとらしく咳払いを１つ。あえて悪そうに笑ってみせて、応えの代わりにする。 　まあ、もしも隣に座る彼が望むなら、ドＭにだってなっても………流石に少し難しい。その場合は、彼の性癖を変えさせてもらうことにしようかな。 　むしろ彼をドＭにしちゃおうかな、という内心の企みが漏れていたのか、隣で彼が身震いして、自分の体を抱きしめると、きょろきょろと周囲を見渡した。 　ごめんね。寒気を感じたのならオレのせいっす。白状します。だから、ねぇ。ちゃんとオレを見てね？ 　これからも、ずっと。